180°の可動域を取り戻す:50代男性の四十肩治療ストーリー

2024.08.31

年代/性別/職業

50代、男性

初診時の状態

患者さんは、四十肩による右肩の痛みを訴えて来院されました。特に、三角筋粗面辺りで外転時に痛みを感じる。

見立て/治療計画

初診時の診察では、患者さんは三角筋粗面付近に外転時の痛みを訴えていた。

真横への外転を試みる際には、屈曲45°の代償動作が見られた。

まずは三角筋の問題を疑い、粗面部の揉捏を行ったが外転角度が90°から100°に改善した程度で、大きな効果は見られなかった。

ドロップアームテストとダウバーンテストを実施し、棘上筋と滑液包の異常を疑ったがいずれも陰性。

次のステップとして、scapular planeの角度を確認。

その結果、肩甲骨が約45°の外転位にあることがわかり、これが痛みと可動域制限の原因である可能性が高いと判断した。

治療計画は以下の通り:

  1. 菱形筋の起始停止リセットトレーニング(リセトレ)
  2. 烏口上腕靱帯へのアプローチ

を基に週一回への来院を促す

施術内容/経過

治療の第一段階では、菱形筋の起始停止リセトレを行う。

その後、肩甲骨の位置を調整するために烏口上腕靱帯へのアプローチを実施。

これにより、肩の外転可動域が145°まで改善。

さらに、マワヒネリキを用いることで、最終的に外転可動域を180°まで回復させることができた。この治療過程で、肩甲骨の位置と外転角度の関係が明確になり、患者さんの痛みと可動域制限の大部分が解消された。

まとめ

このケースは、四十肩における肩甲骨の位置が肩の可動域に大きく影響することを示している。菱形筋と烏口上腕靱帯へのアプローチが有効であり、scapular planeの調整が重要な治療ポイントとなった。患者さんは、治療の結果として、肩の外転可動域が180°まで回復し、日常生活の動作も楽になった。

用語解説

・四十肩:肩の関節や周囲の組織に炎症や拘縮が起こり、肩の痛みや可動域の制限が生じる状態。一般的には40歳以上で発症しやすい。

・三角筋粗面:三角筋が付着する上腕骨の部位。

・ドロップアームテスト:肩の筋力や回旋筋腱板の損傷を評価するためのテスト。

・ダウバーンテスト:肩のインピンジメント症候群を評価するテスト。

・scapular plane:肩甲骨が前面に対して形成する角度。肩の可動域に影響を与える。

・菱形筋:肩甲骨を安定させる筋肉。

・烏口上腕靱帯:肩関節の安定性を維持する靱帯の一つ