50代女性:左肩周囲のファシア癒着の改善例
年代/性別/職業
50代/女性/介護士として働き、時折大量調理も担当
初診時の状態
左肩周辺の不調:2023年8月から左肩周辺と腕に無数のしこりが見られ、筋肉同士がくっついている感覚。特に二頭筋や烏口腕筋、肩ローテーターにしこりが多い。可動域には問題がなく、むしろ柔軟性があり過ぎるくらい。
腰の辛さ:介護の仕事で常に腰が辛く、右坐骨神経ラインに怠さがある。過去に仙骨を割ったことがあり、骨盤にプレートが入っている
見立て/治療計画
左肩の状態:介護仕事での移乗作業や大量調理での重い鍋を持つこと、週一回の孫の抱っこなどが原因で筋疲労と血流不良が進行。
これによりファシアの癒着が起こり、無数のトリガーポイントが形成されている。可動域は良いが、不調や不快感が強い。
腰にはプレートがあるためアライメント補正の施術は行わず、B+左肩ローテーションで骨格から改善。少しでも腕力だけでなく体幹にも力が入るように運動を取り入れる.
施術内容/経過
施術後、状態はよくなるが癒着を取るために怠さがでやすい傾向に見られ持続時間が短い。
左肩が増悪するような動作は避けてもらう。
受難性があるので無理に結滞動作をしなくてもいいことを伝えるもしたがってしまうので今は必要以上にすることへのリスクを伝えて指導
3ヶ月目からファストトレーナーを血流循環、表層のファシアの伸張性や滑走性を改善する補佐的役割として導入
2ヶ月経過時には癒着の改善が見られ始め、それぞれの筋肉が役割を果たすようになり回復力へと繋がっている
まとめ
今回、介護士という動作が大きくでやすい職業ということもあり施術のみで完全に不調を取り除くのは難しいと早期に判断し、運動療法だけでなく血流循環も促せるファストトレーナーを利用し、下降性疼痛抑制系と内因性オピオイドの賦活化も狙うことができた。
用語解説
・ファストトレーナー:専用のラップにあらかじめ設定した空気圧で空気を送り込み、自動で微調整をしながら幅広く筋肉を圧迫し自重運動をすることで筋肉内の毛細血管の血流が制限され低酸素状態になり早期に促すことが可能になる。
効果として血行促進やマイオカイン等のホルモンの分泌による筋力強化、早期回復やストレッチによる滑走向上、短時間で交感神経が活性化し戻る際に振り幅のバランスが改善されて自律神経が整う
・ファシア(筋膜):筋肉や臓器を包み込む結合組織の膜
体全体にネットワークのように広がっており、筋肉や内臓を支えたり、形を保つ役割を果たしている。ファシアは体の動きや姿勢を支え、筋肉同士の滑りを良くすることで、スムーズな動作を助ける。ファシアの硬さやねじれが原因で痛みや可動域の制限が生じることがある。
・下降性疼痛抑制系:脳から脊髄へ信号を送って痛みを抑える仕組み。脳が痛みを感じたとき、このシステムが働き、痛みの信号を減少させる物質を放出することにより、痛みの感覚が軽減される。
日常生活でのストレスや運動、リラックス方法によってもこのシステムが影響を受けるため、適切なケアが痛みの管理に重要
・内因性オピオイド:体内で自然に作られる化学物質で、痛みを和らげたり気分を良くしたりする働きをする。エンドルフィン、エンケファリン、ダイノルフィンなどがあり、これらは脳や脊髄で作られる。運動やリラックス、笑うことなどによっても分泌が促され自然な痛み止めとして作用する。ストレスや運動などに応じて分泌され、体の痛みやストレスに対する反応を調節する。