衣服の着脱困難:四十肩慢性期改善例
年代/性別/職業
40代/男性/経営者でデスクワークが多い
初診時の状態
左肩から肘にかけての痛みと夜間痛、可動域制限を訴えて来院。
左肩の痛み:特に三角筋中部・後部から肘部内側にかけて疼痛と圧痛があり、夜間痛が強く出ていた。
可動域制限:肩関節屈曲:100°、肩関節外転:90°、肩関節伸展:20°
日常生活の困難:洋服の着脱が最も困難な動作
見立て/治療計画
患者さんのアライメントは右肩/右骨盤上がりの平行四辺形で、顕著な猫背と反り腰が見られた。
猫背により肩甲骨が外転優位になり、可動域制限が顕著。10年以上の運動習慣がなく、筋力検査でもかなり弱化していることが判明。これらの状態と症状を総合的に判断し四十肩と判断。
治療計画:慢性期に入っているため、癒着による拘縮を防ぐために早急に治療とトレーニングを開始。治療と並行して運動習慣を取り戻し、筋力を強化する。
施術内容/経過
腰上から左肩周囲の施術、腋窩神経周囲の筋肉の揉捏とモビリゼーションをうつ伏せで行い、二頭筋の狭圧と前腕屈曲群への施術にて症状の緩和を図る
初期(1〜3回目):治療中に痛みが強く、休憩を入れながら治療を行う必要があった。
2〜3回目の施術では中断が必要でしたが4回目以降は痛みが落ち着き、継続的に治療を受けられるまでには落ち着いた
肘の痛みは4回目の治療でPS5に減少し、2ヶ月目で痛みが消失。
2ヶ月目:アライメント補正をするために腰と胸椎の矯正も進み、腕をクロスする動作が可能。肩周囲の痛みはPS8に減少し、可動域としては依然として変わらず。
2ヶ月半後:肩関節の伸展可動域が30°に向上
3ヶ月目終了:寝る際の痛みも気にならず、PS5に減少。圧痛も減少。
5ヶ月目:痛みがPS2に減少し洋服の着脱も問題なくなる。
まとめ
患者さんは痛みがあると確認したくなって無理に動かしていたために痛みがあっても動かさないことがないように都度指導した。
コッドマン体操や動かせる範囲での肩回しやストレッチを早急に実施するよう伝え、毎回の施術で実行状況を確認した。治療中もジムのトレーナーのように声をかけて励まし、肩に負担がかかる動作を極力避けるようお願いした。
適切な治療と運動の継続が、痛みの軽減と可動域の改善に効果的であることを再確認した。
用語解説
・四十肩(肩関節周囲炎):肩関節周囲の組織に炎症が起きる状態。肩関節の周囲には靭帯、腱、粘液包などがあり、これらが炎症を起こすことで肩の痛みや運動制限を引き起こす場合がある。肩関節周囲炎は肩の過度な使用、急激な運動、姿勢の悪化などが原因となることがある。治療には安静、炎症を抑える薬物、ストレッチやエクササイズなどが用いられる
・コッドマン体操:肩関節のリハビリテーションに使われる運動法の一つ。肩を動かさずに腕を重力に任せてぶら下げることで、肩の筋肉をリラックスさせ、血流を促進します。肩の痛みや可動域の改善に効果的で、肩のけがや手術後のリハビリに広く用いられる。