右膝内側部水腫と歩行時痛の改善:60代男性の治療体験

2024.09.03

患者プロフィール

  • 年代:60代
  • 性別:男性
  • 職業:デスクワーク

初診時の状態

  • 主訴:右膝内側部に水腫
  • 症状の発症時期:2023年11月初旬から歩行時に痛みが発症し、11月中旬にゴルフスイング動作で痛みが悪化。整形外科で水腫を2回抜き、再生治療、サポーター、薬を処方されたが改善が見られず、歩行や階段の昇降に支障が出ていました。

見立て/治療計画

  • 見立て
    • 右膝内側部の水腫
    • 右鵞足部(+)、右膝内側裂隙部疼痛(+)
    • 水腫内側部(+)、熱感内側部(+)、内側裂隙疼痛(+)
    • 膝蓋骨跳動テスト(+)、歩行時痛(+)、安静時痛(+)
  • アライメント
    • 右腸骨:内方変位+前方回旋
    • 左腸骨:外方変位+後方回旋
    • O脚
  • 推測
    • 滑膜の炎症により水腫が再発。滑膜の毛細血管の透過性が亢進して関節液が溜まっている。
    • 立位、歩行時に右つま先重心になりやすく、大腿骨が外旋位になりやすいため、薄筋、半腱様筋、半膜様筋の滑走不全が原因と推測。
  • 治療計画
    • 治療期間:6ヶ月間
    • 1~3ヶ月:水腫の軽減と膝関節の自動運動ROM向上
    • 3~6ヶ月:ADL動作時の痛み改善、弱化筋の強化、足関節のアライメント調整による重心の調整
    • 目標:ADLでの痛みをなくし、ゴルフを再開すること

施術内容と経過

  • 施術内容
    • 腰下B+A+S
    • 右膝B+腓腹筋
    • 右股関節3点+膝窩筋+右梨状筋+右足関節の調整
    • 夜間は弾性包帯を使用
  • 経過
    • 初診施術直後:痛みが軽減するが再発。
    • 1ヶ月目:腫脹、水腫、内側裂隙疼痛、安静時痛が残り、痛みの評価(PS)は6。右大腿骨・脛骨外旋位が強く、大腿筋膜張筋・大腿二頭筋の緊張が見られる。自宅での安静を指導。
    • 3ヶ月目:腫脹と水腫が改善、内側裂隙疼痛が軽減。仰向け他動右膝関節の屈曲が120°、伸展が160°でROM制限あり。痛みの評価(PS)は1。安静時痛はなく、階段降段時の痛みが軽減しリハビリを開始。片足立ちトレーニングを指導。
    • 4ヶ月目:階段昇降動作で痛みなし、安静時痛もなし。軽度のROM制限あり。

まとめ

水腫が確認された場合、整形外科で水を抜くことのメリットとデメリットを考慮する必要があります。水を抜くことで膝関節周囲の筋力低下を軽減できますが、一時的に痛みが軽減されROMが向上するため、負担がかかり悪化する可能性もあります。治療の進行中に患者さんの不安を軽減し、症状の進展と治療の効果を定期的に共有することで、信頼関係を築き、治療効果を高めることが重要です。このケースでは、「痛みの半分は不安」という言葉の重要性を再認識し、寄り添いと共感が治療の成功に大いに寄与しました。

用語解説