長引く左肩の痛みと可動域制限の改善:50代男性建設業の治療体験

2024.09.04

患者プロフィール

  • 年代:50代
  • 性別:男性
  • 職業:建設業(メインはデスクワーク)

初診時の状態

2ヶ月前から左肩に痛みを感じ、毎日のラジオ体操でも日に日に可動域が減少している実感がありました。具体的な症状としては以下の通りです:

  • 左肩峰下付近に疼痛
  • 左棘下筋斜走繊維に圧痛
  • 左肩の屈曲90°、外転60°、内転制限
  • 外旋がほとんどできない(1st、2nd、3rdポジション)
  • 安静時痛が強く、夜間痛で複数回目が覚める
  • スウェイバックによる胸椎後弯、左肩の前方偏位

見立て/治療計画

肩関節周囲炎の炎症期と推測されました。外旋制限や安静時痛、夜間痛があるため、初期段階では夜間痛の対応を重視し、痛みを軽減することを目指しました。具体的には:

  • 寝方の指導
  • 関節運動を極力伴わない肩甲骨のエクササイズ指導

施術内容と経過

  • 施術内容
    • 初期:炎症期の夜間痛対応に重点を置きました。
    • 中期:2、3回目の施術後、PSが少し下がった段階で特定の手技(マワヒネ)を導入するも、症状が悪化したため、初期の施術に戻しました。
    • 継続施術:1ヶ月ほどで屈曲、外転の可動域(ROM)が徐々に向上しましたが、夜間痛や安静時痛は依然として強いままでした。3ヶ月経過後もROMの改善は見られたものの、夜間痛や安静時痛が続いていました。患者さん自身も仕事中に痛みを感じながら動かしていたため、痛みが持続していたと考えられます。
  • 追加診断と治療
    • 医科受診を相談し、X線検査(X-P)を実施。骨性の異常は見られませんでしたが、まだ炎症期が続いていると診断されました。ステロイド注射を受けたところ、夜間痛が軽減されました。
    • その後、夜間痛や安静時痛が落ち着き、拘縮期に移行したと推測。徐々にマワヒネ等の関節運動を取り入れ、施術開始から半年が経過したところで痛みの評価(PS)が1〜2まで軽減しました。結滞動作での制限が残るため、治療を継続しています。

まとめ

この症例では、炎症期が比較的長く続いたため、疼痛発生から約半年間に渡り治療が必要でした。文献上、炎症期は約2〜9ヶ月間続くことがあり、施術者側の理解と安心できる説明が求められます。また、炎症期における過ごし方の指導が徹底できていなかったことが、痛みの長引いた要因かもしれません。

さらに、炎症期の疼痛軽減を目的としたステロイド注射が効果的であり、その後のリハビリを進めやすくする点では、なかなか改善しない症例において有効な選択肢であることが示されました。